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日常であった事とか拍手のお返事を載せていくと思います
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 どなたか、素敵な零ss(百合)のサイトをしりませんかー!?

 と、探すのど下手な夏星は悲しく辺境の片隅で叫びます。

 あんまり無かったから、ちょっと零ssを書きました。

 ネタバレは普通に大有り。作者に都合よすぎる設定ですので、そういうの嫌いな方は注意です。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 あの事件から二ヶ月が経った。


 私、水無月流歌はそういった時の流れを、冷たく頬を撫でる風と共に感じ入り、そっと天を仰いでいた。
 空には重い雲が一面に覆い、午後からは雨が降ると天気予報で伝えていた。

 窓際の教室の隅。
 朝が早い為に、私以外は誰もいない無人の教室。酷く静かで、こういう時間を密やかに好み私は、頭の中で『あの』音楽を流しながら、こうして穏やかに過ごせる『今』をゆっくりと噛み締める様に味わっていた。

 ―――。

「?」

 っ、と静かに顔を教室の入り口へと向ける。
 学校の上履き特有の足音が、二人分近づいてくるのが聞こえたからだ。
 
「だれ……?」

 自分で言うのも何だけれど、こんなに朝早くから登校してくる様な物好きに心当たりがなかった。
 部活に励む生徒でさえ、朝練には早すぎる時間帯なのだ。
 首を傾げながらも、その足音が迷いなく此方に近づいてくる気配に、そっと鞄の中に手を入れる。
 これは、もう習慣。
 鞄の中で眠る射影機の冷たい感触を心強く思いながら、もしも人在らざる者であったらと、冷静に様子を伺う。

 と。
 声が小さく、だけれど聞き間違いようがない見知った声が届いてきた。

「あぁもう。眠いのよ……!」
「海咲、でも、海咲が早く来ようって……」
「うるさいわね! 分かってるわよ!」
「……ご、ごめんなさい」

 力が抜ける。
 苦笑して、鞄から手を出す。
 この声は、あまりにも分かりやすい、私の友人たちのものだから。

 傍目にも機嫌が悪く、八つ当たり気味に声を荒げている強気な少女がは麻生海咲。そして、そんな彼女をきっと涙目で伺っているのだろう弱気な少女が月森円香。
 帰ってきてからもあまり変わらない。困った友人たちに苦笑して、椅子から立ち上がる。
 そして少しだけ足音を殺して、わざとガラリとドアを開けた。

「っ?!」
「きゃ?!」

 パシャッ!!


「…………」


 素晴らしい反射神経。
 海咲は私の顔をしっかりと撮っていた。射影機で。
 円香は、そんな海咲に庇われる様に背中に隠れ、私の顔を見てほっとしていた。

「……流歌」
「おはよう、二人とも」

 挨拶をすると、とても幽霊に優しくないフル装備の射影機。
 私のと並んでも引けをとらない素晴らしい強化状態のそれを、すぐに鞄の中へとしまい、射影機を構えていても放そうとしなかった、海咲の『大切な人』をそっと抱きしめた。

「……」

 そうすると、普段は我侭で威圧高なのに、幼く見えて可愛いくて、私はうっすらと微笑んでしまう。
 海咲はそんな私を不信感を抱いた顔で見て、そのままふんっ、と鼻を鳴らして顔をそらしてしまう。
 もちろん、それでも彼女の大切な人は優しく抱かれたままだけれど。その様子に、円香が複雑そうに目を伏せてしまった。

「……海咲」
「何よ?」
「こんな朝早くにどうしたの? いつもはもっと遅いのに」
「って、それはこっちの台詞よ。……あんた、いつもどれだけ早くから学校に来てるのよ」

 心底呆れていると言わんげに、海咲は私を睨むとふいっと私の横を通り過ぎて教室の中に入ってしまう。
 それに慌てて円香がついていき、私も二人の後をのんびりと追う。

「今日はたまたま、早くに目が覚めたから来ただけよ!」
「そう、なんだ。……それで、本当の所はどうしてなの円香?」
「え? あ、うん。海咲が、夢の中で海夜に学校に言ってみたいってお願いされたから、他人の目に触れられない早朝から行こうって事に」
「円香ッ!」
「ひぅ?!」
 
 ふしゃーっ。と猫の威嚇みたいに怒る海咲に、円香は涙目でオロオロして「ごめんなさい」を繰り返している。
 そんな二人に和みながら、そういう事だったのかと、海咲の腕の中で微動だにせず大人しい彼女を見る。

 彼女、海夜。

 割と勝手に動いて、気づいたらそこにいる呪いの人形な彼女が、そんな可愛らしいお願いをするとは思わなかったからこそ、ほほえましい。

「……それで、ずっと抱いてきてたんだ?」
「……そうよ? 何か文句でもあるわけ?」

 逆切れぎみに声を荒げて、自分の席にさっさと座り、海夜の服についた糸くずや埃を、丁寧に取り除いていく。
 愛情を感じる指使いに、彼女が海夜を溺愛しているのは知っているのだけれど、苦笑してしまう。
 彼女は、本当に鈍いというか空気を読まないというか。

 円香が、そんな海咲の背中を見つめて、悲しげな顔をして、少しだけ尖った瞳を海夜に向けている。
 なんて事にちっとも気づかない。

 ……何だか、帰ってきてからおかしな方向へと面白くなっていく彼女たちを見て。私はのんびりと席に座る。



「……み、海咲。あの」
「何よ、うるさいわよ」
「……えーと、ね? 海咲の髪に、少し寝癖がついてるから、直すよ」
「あぁそう。じゃあお願い」
「うん……」


 暫し、衣擦れの音のみの静寂。


「? って円香、あんた何してるわけ」
「えっ?! あ、ご、ごめんね! あの、ちょっとぼーっとしちゃって」
「はぁ? どうでもいいけど、重いんだから、あんまり頭に体重をかけないでよね」
「うん、き、気をつけるね」

 暫し、気まずげな沈黙。

「あの、海咲?」
「何よ」
「み、海咲の髪って、いつも綺麗だね」
「あっそ」

 ……適当にあしらわれて悲しそうな気配と無関心な気配。


「…………はぁ」


 ……私は、少しばかりいたたまれなくなり、窓の外に向けていた視線を彼女たちへと戻した。
 短いけれど、いろいろと含まれている会話。
 円香が、子犬みたいに小さな尻尾をふって、足にしがみついて『構って!』ってじゃれているのに、当の飼い主はちっとも気づかずに、大切な人を抱きしめている。
 ……気のせいではなく、海夜の無表情な筈の顔が微笑んで見えて、パシャリ! と撮ってしまう。タイトルは『微笑む人形』
 ……ん。しょうがない。


「……海咲」
「んー?」
「……円香の制服にも、少し皺があるよ」
「は?」

 とたん、鋭い視線が円香に突き刺さり、びくりとする円香。「え? え?」と私と海咲を見ているけれど、私は少し微笑んで見せた。

「! る」
「あんた、何してるのよ。ほら、こっち向いて」
「あ」

 苛立たしげに「私の隣に立つんだからしゃんとしなさいよね!」と円香の制服をきっちりとのばしていく海咲。
 その表情はどこか苦々しげだけれど、円香はほわんっと嬉しそうだ。……あ、海夜の背後にオーラが。すかさずに、パシャリと撮る。

「……」

 そこには、等身大の美少女がうっすらと浮かび上がり、海咲の首に抱き付くように両腕を回していた。タイトルは『海咲にすがりつく少女』

「……もてもてだね」

 女の子に。
 なんて軽口を少し吐いて、私はまた窓の外へと視線を戻した。


 静かな筈の教室が、今日は少しにぎやかで、まだ数時間の余裕があるというのに、暖かににぎやかで。


「……ん」


 こういうのも、悪くないかなって思う。
 
 
 海咲の怒る声と、円香の情けない許しを請う声。
 微かに感じる海夜の暗い気配。


 私たちの日常は続いていて。
 
 私たちが、此処に皆でいられる奇跡を、私は瞳を閉じて感化する。



 海咲は大切な人と出会えた。
 円香は生きて、海咲の隣でおもちゃではないとの確信を持てた。
 私は、大切な記憶を取り戻した。




 私たちは、今日もそれなりに平穏で、元気だった。


 だから、それで充分です。

 
 窓ガラスに映る、私の満足そうな笑顔に、私は少し照れてしまった。

 
 
 
 
 
 
 
 
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