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日常であった事とか拍手のお返事を載せていくと思います
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 暑いですね。
 
 東方でルーミアとミスティアです。
 
 これを書いたきっかけ? た、多分、ランルーくんです。

 
 まあ、ただのラブラブフラグ、という奴です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「私ね、いつかルーミアに食べられちゃうんだろうなって思ってるの」


 困った顔で眉根を下げながら、でも笑顔でミスティアはそう言った。

 「へ?」って、唐突過ぎるそれに、本当にびっくりした私は、食べかけのお肉を落っことして、まじまじとミスティアを見るけれど、ミスティアの顔は変わらずに、冗談だよ~の一言もなくて、私は彼女が本気なんだって分かって、遅れて、ざわざわと内側に蟲が這い回っている様な不快感を覚えた。

「……えと、何を言ってるの? みすちー?」
「ううん、気にしてほしいけど、気にしなくていいよ」
「……なにそれ」

 口の中の咀嚼物を飲み下して、知らず唇が尖り気味になりながらも、チラリとミスティアお手製のお弁当を見る。
 お肉とおにぎりと卵焼きと野菜。それらが色取り取りに小さなお弁当箱の中で宝石みたいに輝いている、見ているだけでよだれが止まらなくなる、おいしそうな、実際にもとってもおいしいお弁当。
 なのに、お腹はすいているのに、急に食べたいって気持ちが急速に萎んでキリキリとしてくる。

「ねえ? 本当に何を言ってるのさ、みすちー」
「ん、だから気にしなくていいってば」
「……」

 困った顔のままで口だけで笑って、背中の羽をぱたぱたって動かす。
 その動きは、私の内側の欲望をチリッと燃やして、少しだけ、本当に少しだけ、喰い付いたら美味そうだ、なんて思わせる。
 でも、それはいつもの事だ。
 実際にミスティアはおいしそうだし、おいしいのだろう。
 それを知っているけれど、本能で理解しているけれど、だから何? って感じだし。
 私はミスティアを食べたいと思っても、食べようなんて考えたこともない。
 なのに、ミスティアは瞳だけ、しょうがないよね? って諦めを含んだ寂しそうな色で、私を見てる。
 キリキリと、また痛くなる。

「……みすちー?」
「んー?」
「……みすちーはさ、私がみすちーを食べちゃうと思ってるの?」
「………」

 ミスティアは、私の問いに、まさかそこまではっきり聞かれるとは思わなかったな、って顔をして、すぐに「うん」って頷いた。
 もう、彼女の中で決定事項になっているのだろう、それはあっさりとしていて力強い「うん」だった。

「――――」

 それを見て、私は怒るとか呆れるとかじゃなくて。疑問とか不満とかが膨らんでいって。
 ただ、悲しいなーって、ぎゅって強く握ったお箸を見た。
 ミスティアと一緒に作った手作りのお箸。ミスティアみたいに綺麗にもてなくて、ぐーで握って不器用にご飯を掻きこむ私は、そんなに危なっかしくて、不器用そうで。…………信用、ない、かな?

「……そーなのかー」
「うん」

 ぱたぱたと、羽が動く。
 私はどんな顔をしているのか知らないけれど、とにかく笑わなくちゃって、わはーなんて頑張って笑いながら、お弁当の残りを箸でさして口に入れた。
 もぐもぐって、おいしいって感じるのに味が分からない。
 変なの。

「ルーミアはさ、きっと、いつか私を食べちゃうよ」
「……そんなこと、しないよ」
「ううん、しちゃうよ」

 ミスティアは、やけにさっぱりとそう言って、自分もお弁当をつつきながら「うん美味しい」なんてしんみりと言った。

「……でも、いいよ」
「…………」
「私もほら、こうやってお弁当を食べてるし。生き物が生き物を食べるなんて当たり前だしさ。ルーミアが私を食べても、いいの」

 ミスティアはどんな顔をすればいいのか分からない、変な顔をしている私をを見て、ようやく普通に笑う。

「っ」

 私は、笑おうとして、失敗してすぐにうつむいた。

 食べないのに。食べるわけないのに。何だろなーって。

 何で、ちゃんと、絶対にみすちーを食べないよって、言えないのか、自分で、自分に自信が持てない曖昧さにいまさら気づいたとか。色々あるけれど。

 ごくりと、喉がなったのが、怖かった。

 ミスティアの笑顔を見て、チリリッと胸の奥が焼けそうな衝動が襲ってきたのが、本当に怖かった。


「…………」
「あ、たださ。ルーミア、そんな私から一つだけお願いがあるんだけど」
「…………」

 目で、ちらりとミスティアを伺う様にすると、ミスティアがとても真剣な顔をして、ぐっと顔を寄せた。


「その、恥ずかしいけれどさ。内臓とか、その、全部食べてね? 髪の毛とか爪とか骨とかも、残さないで食べて欲しい。ね? お願いします」

 箸を持ったまま、拝むように手を合わせて、ミスティアは本当に真剣な顔でお願いした。

 ―――。

 お腹がきゅうって鳴った。

 それで、声を上げて泣きそうになった。














 ◆ ◆ ◆













 遺言はおしまい。

 私はふらふらと去っていったルーミアを見送って、内心でやりきった感に溢れて、けっこう充実していた。
 ルーミアが綺麗に食べきってくれたお弁当箱を包んで、私は自分の分をもくもくと食べ始める。

「……にしても、ルーミアってば何て顔してるのか」

 思い出して、チクリと胸が痛い。
 でも、ルーミアは無自覚だろうけれど、彼女の目は、私を捕食対象として見つめる事が多々あった。
私としては、かなりの命の危機で怖かったし、こういう意趣返しも、仕返しという意味ではそんなに悪くないのかもしれない。

「……んー」

 目を見開いて、呼吸をしているのか不安になるぐらい閉じられた唇。引きつった頬と、酷く怯えた顔。
 怖がっている、様だった。
 多分だけど、こんな事を急に言い出す私と、それを否定できない、自分に。

 そういう怖いっていうのを、普段は私が感じているだけに、気の毒で、やっぱり悪いことをしちゃった気になる。
でも、心の奥で少しだけでも気が晴れてしまった私は、けっこう酷い奴だ。

「……まあ、食べられてもいい、なんて言ったぐらいだし、そこまで悪い友達ではないわよね。うん」

 軽く塩漬けした温野菜を食べて、もしかしたらこれが最後の食事になるのかしら? なんて、毎食後に必ず考えてしまうそれに、思わず苦笑。

 ルーミアは良い子なんだけれど、本当に良い子だけれど。
 私に向ける目が、ほぼ毎回、一瞬だけだけど、欲望に囚われて剣呑で、とにかくいつ食べられるのかとびくびくしていた。
友達なりたての頃なんて、なんで友達やってるんだろうって後悔するぐらいだった。
……例えるなら、狼と羊ぐらい、私と彼女の妖怪としてのランクは違うのだ。
だから、私がどれっだけルーミアを怖がっていたかなんて、彼女はきっと知らないだろう。
 たまにギラッて見られて、悲鳴を押し殺していたのを知っているのは、リグルと大ちゃんぐらい。チルノも、そしてルーミア本人も腹立たしいぐらい気づいていない。
 わはー、だしね。

 まあ、そんな恐怖にも時が経つにつれて慣れていき、怯える事が日常茶飯事で、だけど生きている私。
夕日を見て泣きたくなる気持ちを四桁こえるぐらい味わった私自身、不思議な事にルーミアが嫌いになれずに、この天敵と友達という異常経験を延々と続けて、続けていられて、なんか諦めた。
というか、数年前にふっきれた。

 友達だし、ルーミアになら食べられて、その血肉になってもいいかなーって、そういう感じに。

 だから、久しぶりに二人きりでピクニックで、丁度良い機会で、うっかり口が滑って、そのまま言いたい事を上手に伝えられて、本当に良かった。

 これで、いつ食べられてもそこそこに悔いはない。
 小梅を入れた俵型のお握りを箸で崩して食べながら、のんびりと空を見る。
 今日もいい天気。
 ある意味で、こうやって日々を大切にかけがえなく過ごせているのは、ルーミアのおかげかもね、なんて苦笑しながら、この幸せに静かに満たされる。



 でも、ちょっと贅沢を言うのなら。

 なんて、私は考えて笑ってしまう。

 どうか、おいしく、どんなものよりもおいしいと感じて欲しいな、なーんて。


 けっこう我侭な願い。



  
 
 
 
 
 
 
 
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